積極的方策 7



 室内に鳴り響くけたたましい電話の呼び出しのベルに、エドワードはびくりと顔を上げた。が、それ以上動くことはできなかった。
 「も……、離せ……っ」
 己れの体を拘束し、壁に押し付けたままどこうとしない男に、心底腹が立っていたが、体格の差、腕力の差は歴然としていた。確かにエドワードは並み並みならぬ高度な体術を仕込まれてはいるが、軽量級の悲しさで、力ずくで押さえ込まれてしまうと襲撃者を跳ねつけることができなかった。しかも、いくら抵抗しても相手はそれを覆すだけのテクニックを持っており、掣肘を加えようとしても、蹴り上げようとしても、悉く空を切り、反対に壁に叩きつけられ、ただでさえ怪我をしている四肢が痛んだ。
 「どうした、もう終わりか」
 耳元で、わざと背後の男が挑発的に囁く。低く掠れるような声は、エドワードのなけなしのプライドを刺激した。
 やがて、諦めたように電話が切れた。室に静寂が戻って来る。
 「こ、こんなことして、ただですむと思うなよ、大佐」
 「脅しにもならないな」
 そう言うと、ロイはわざと己れの体を押し付け、エドワードを壁にへばりつかせた。屈辱的なポーズで、もうどれだけ嬲られているだろう。
 いきなり訪ねてきて、この仕打ちだった。尋問の続きなのか、しかし、ロイは質問らしい質問を口にしない。ただ、エドワードを拘束した。
 「いったい、何のつもりだ」
 「君の忍耐力がどれほどのものか、試してみたいだけだ」
 嘯くように言ってやりながら、しかし、ロイ自身、どうしてこんなことをしているのか、よく判っていなかった。
 今日、片付けなくてはならない仕事は山積しているし、提出期限の迫っている報告書、文句を言いに来る横柄極まりない副官部の士官の顔、決まりきった内容であるにも拘らず面倒な書きかけの決済書や稟議書の文面等々……、そんなものが頭の隅をちらちらと横切る。
 就業中に私用で執務室を離れるなど、言語道断だった。にも拘らず、どういうわけか、いきなり問答無用の衝動に駆られてここへ来てしまった。戸惑うエドワードを押さえつけ、容赦なく飛んで来る面罵の言葉を聞き流しながら判ったことは、己れが酷く立腹しているということだった。
 恐らくそれは、エドワードに手酷く失望させられたからだろう。
 ヒューズは、否、情報将校たる者は、手駒となる者に溺れるほどの情と愛戯を注いで何もかもを絡め取り、決して裏切らないよう念入りに仕込みをする。
 エドワードもそのような手管に堕ちてしまったのか、と思うと、体の奥が焼け付くような怒りと苛立ちを感じた。全人口の上部数%に入るほど知能はずば抜けて高く、精神的にも早熟で思考回路も成人並みに整然としているというのに、この体たらくはいったいどういうことか。もっとも、感情の起伏においては未熟でまだまだコントロールが不得手というウィークポイントを上手く衝いて、ヒューズはエドワードを己れの意のままにしたのだろう。昔からヒューズは人をその気にさせたり、そうせざるを得ないような情況に持って行くのが上手かった。
 が、ロイにとって、それは不興を買う対象でしかなかった。誰にも媚びず、誰にも靡かないのがエドワードのポリシーだったはずである。時には自ら孤立し、軍の方針に敵対するような道を選んだりもした。口では非難し、嗜め、呆れながらもロイは心のどこかでその毅然とした態度を小気味よく思っていた。が、いつの間にそれをかなぐり捨てて、エサを欲しがる野良猫のように足元に擦り寄って来るようになってしまったのか。
 ハボックに締め上げられながらも、こちらを睨みつけてきた瞳の強さに快いものを感じながら、そうさせているのは別の誰かなのだと自覚したとたん、胸の内に冷ややかな憤りが湧き上がって来た。
 エドワードとヒューズが立ち去ってから、ロイは大人しく書類作成に没頭していたのであるが、右手は文字を記していても、頭の中は別の思いに白熱していた。ヒューズにどうやって手懐けられたのか、飼い慣らされてしまったのか、想像すればするほど胸がむかついた。
 エドワードに危害を加えるつもりはなかったが、こうやって手の内に収めた今、残酷に引き裂いてやりたくなる。
 かちゃり、と金属が触れ合う音を耳にして、エドワードはぎょっとした。
 「ど、どこ触ってんだっ」
 「判っていることを聞くな」
 それ以上の無駄口をロイを許さなかった。邪魔な者を邪険に押しのけようとする手を軽く制し、右手でエドワードの革パンツのファスナーを下げると、躊躇いもなく中に指先を差し入れた。
 「てめ……っ」
 何をされるのか判ったのか、エドワードが身を捩り、己れの背後にいる男を睨みつける。が、面罵される前に、ロイは中に収まっているものを探り出すと、先端のくびれを二本の指で締め付けた。
 「……っ」
 びくん、とロイの腕の中でエドワードが四肢を波打たせる。息を呑むという表現がそのまま当て嵌る様相で、まだ幼さを残す顎のラインが仰け反った。
 「こ、この…クズ野郎……っ」
 「相変わらずの口の悪さだな」
 仕返しするように、右手の人差し指と親指で作られた輪が更に縮まる。きゅうっと音がするほどの衝撃にエドワードの身が竦み、抗議するだけの抵抗をいきなり奪われてしまった。悔しげな、罵倒の言葉の断片が、エドワードがまともに口にできた最後の台詞となった。
 「ち、ちくしょ……っ」
 「こういうのには慣れているのだろう?」
 笑みさえ含ませて、ロイが嘲笑う。自分が同性の生殖器を手にする日が来るとは思いもしなかったが、エドワードの初々しい反応はなかなかそそるものだった。
 「これをこうすれば」
 と、ロイはもう一方の手で掴み上げた男根の先端に掌を這わせた。ぬるっとした感触とともに、エドワードは躯幹を突き抜ける快感に声を失い、下肢を硬直させた。引き攣ったような痛みが腰の奥から大腿を震わせ、足先まで痺れさせる。
 「……っ」
 いきなりの強烈な刺激に、エドワードは息をするのもままならないほど激しく喘いだ。必死で壁に爪を立て、何とか身を立てるのが精一杯だった。油断をすれば、倒れてしまう。局部からの貫くような快感は、断続的に二度三度と襲ってきた。そのたびにエドワードは声にならない悲鳴を上げた。
 こんな愛撫は知らない。普通は、竿の部分を扱いて射精を促し、己れを開放して快楽を得る。禁を解いた時の一瞬の悦楽が、男の性的な快楽の大部分を占めていたはずであるのに、ロイは敏感極まりない先端ばかりを撫で擦るように刺激し、エドワードを果てのない責め苦のただ中へと突き落としていった。
 「く…ぅっ」
 食い縛った歯の間から呻き声が漏れる。膝が崩折れそうになり、エドワードは咄嗟に身を捩った。逃げようとしたわけではなかったが、ロイにはそう思えたらしい。片腕でエドワードの体を抱き締めると、膝を割り込ませて足を閉じられないようにした。
 「やっ、やめろ……、手を離せっ」
 なおも抵抗するエドワードの股間に己れの片膝を押し当てる。それだけで、エドワードは声を詰まらせた。先端部分だけでなく、局部の他の部分に手を加えれば、その刺激は倍増する。あっという間に肌が上気し、襟足から見えていた金色の産毛がさぁっと逆立つ。受けている快楽がどれほどのものか、如実にロイに知らしめる兆候は酷く生々しく、また背徳的だった。快感というには苦痛に近い、下肢を突き刺すような衝撃の連続である。以前は拷問にも使っていたという手法を実験する気分で、ロイは北叟笑むように好奇心を満たした。
 「まだまだだ」
 先端から滲んだ液体を潤滑油に、くるくると掌を回すように擦りながら、括れの裏の部分に触れる。イキたい衝動が募っているだろうそこを刺激してやりながら、決してイカせないよう注意しつつ、ロイはエドワードを嬲り続けた。
 こういう時、エドワードは声を出さないものだと思っていたが、どうしても堪えきれないのか、意味の判らない言葉の端々を呻くように何度も漏らした。目の奥にフラッシュライトが絶え間なく閃き、今に全身の感覚が麻痺したように指先一つ、己れの意志では満足に動かせなくなる。筋肉も神経も下肢からの快感が戦慄となって襲ってくるがままに晒され、エドワードは何度も背筋を弓なりに仰け反らせた。
 「もうムケているな。かななかいい具合だ」
 そう言うと、ロイはいつの間にか勃起していた鈴口に指先を押し当て、爪先でそこを抉り出すように動かした。
 「あぅっ」
 とてつもない激痛と戦慄に、エドワードは神経が焼き切れそうになった。ぬるぬるとした液体の漏出は止まらず、ロイの手の動きも止まらなかった。容赦のない性戯に、頭の中が次第に焼け爛れて来るのが判る。どろどろとした熱泥が渦巻き、四肢のあちこちをぴしぴしと刺激しながら体の奥を混乱させていく。メチャクチャに混乱した頭の中は、次第に何も考えられない空白状態になっていった。
 これまで自分で味わった自慰の、絶頂へ到達する寸前で情欲を塞き止められ、その焼け付くような快感が延々と続いているような感じだった。放置された怒張の括れから上を無慈悲に刺激されるたびに、狂乱したように体が跳ね上がる。いつの間にか意識が飛んで欲望のみが先行した振る舞いを見せていた。
 その醜態を、エドワードはロイの眼下に晒し続け、耐えられる限界まで追いやられて行った。知らないうちに涙が流れ、怪我の痛みも忘れてしまっていた。
 が、更にロイは片手をエドワードの胸間に這わせると、しっかり立ち上がっている小さな乳首を見つけ出した。それを残酷にも、摘み上げる。
 「や……っ」
 びくんと体が反応する。ロイは忍び笑った。
 「ここも反応している。敏感で女みたいだな。可愛いものだ」
 わざと屈辱的な台詞を吐いてはみたが、エドワードの耳に届いているのかどうか定かではなかった。ただ、もどかしげに腰を押し付けるような素振りを見せた。そんな反応も女の媚びに似ている。もっとも、責め苦から逃れようと腰を引いただけなのかもしれなかったが、敢えてロイは己れの考えを訂正しなかった。今は、エドワードを追い落とすための言い訳や材料がいくらでも欲しかった。
 「どうした、何をして欲しい」
 悪戯っぽく耳元に囁いてやると、エドワードはされるがままでありながら、ロイを睨むような視線を送った。まだ、陥落してはいない。引き回されてもいない。こんな仕打ちを受けても拒否の態度はあからさまだった。否、呑み込まれまいと必死で抵抗している。
 いったい、何を守ろうとしているのか、ロイには判らなくなってきた。ヒューズか? それとも、己れの意地か?
 が、どうでもいい、とすぐにロイは結論を下した。
 「やめて欲しいか」
 言いながら、亀頭に擦り付ける手の圧迫を強めにする。とたん、エドワードはびくりと体を波打たせ、くぐもった声を漏らしたが、哀願の言葉は出てこなかった。ひたすら耐えることにしたのだろうか。しかし、足の指が内側に曲がり、内股はひくひくと震え始めていた。額には脂汗が流れている。辛いに違いない。
 これでも己れに縋りつかないというのなら、更に苦痛をレベルアップするしかない。
 「そういえば、こういうやり方もあると聞いている」
 と、ロイはローリングするように、先端の上下左右を撫で擦ってやった。
 「い、い……、ダメだっ」
 ぎりりと壁に爪が立てられ、傷をつける。それだけでなく、エドワードの腰が痙攣するように震えた。
 何が起こったのか、エドワードは霞み始める頭の中で必死で足掻いた。妙なことに、男根の付け根部分がずきりと疼いた。否、ここに穴があれば突っ込んで欲しい、という男にあらざる欲求がいきなり湧き上がって来る。
 「もっ、もう、触るなっ」
 己れの苦境をどう説明していいのか判らない。じゅくじゅくと焦れた秘部が潤む。いったい、この体はどうなってしまうのか、漠然とした不安が衝き上げてくる。が、それを蹴散らすように、ロイの手はやっと竿の裏の部分を扱いた。
 「う……っ」
 エドワードが身を竦める。が、すぐに愛撫は遠のいた。またもや先端部分を指先で詰られ、鋭い快感が躯幹を犯した。
 「……っ」
 引き攣るような悲鳴が漏れたその刹那、ロイは手を離した。エドワードは壁に縋りついたまま、背を仰け反らせた。が、それは一瞬のことだった。
 「うぅ……」
 ずるっと、支えを失ったエドワードの手が壁を滑る。そのままずり落ち、床に座り込むように倒れた。射精はしていない。しかし、体は吹っ飛ぶような悦楽に浸された。
 ドライオーガズムという単語をエドワードが知るのはもう少々後のことになるが、通常の開放とは異質な快感に四肢は緊張して震え、しばらく収まらなかった。
 「エド」
 ロイが軍靴の爪先でエドワードの顔を小突くように蹴る。脱力しているエドワードの体は他愛もなく床に転がり、そのまま気絶するようにだらりと横たわった。息遣いが荒い。が、意識はしっかりしていた。
 「この下衆野郎……っ、こんなことして、ただですむと思うなよ」
 「復讐でもするつもりか。私の寝込みを襲うというのなら歓迎するが」
 軽口を叩きながら、視線を股間にやる。まだ腹筋も足も笑っており、体が自由にならないのだろう。ずきずきするような鋭い快感が体中を駆け巡り、抑えようもなく凶暴に高まって行く。放っておけば収まるという状況判断などできない様相に、エドワードはすぐに気付いた。
 「あ、あんた、いったい何やったんだ」
 「口で説明することか」
 ロイはもう一度エドワードの顔を小突いた。それから逃れるようにエドワードは姿勢を変え、肘を衝いて何とか立ち上がろうとした。が、無駄な努力だった。使い物にならないほど下肢はがくがくと震え、とてもではないが、上半身を起こすのが精一杯だった。いったい、己れの体がどうなってしまったのか、咄嗟に理解できないのだろう。
 面白そうに、ロイは片膝を折ると、エドワードと視線を合わせた。涙の浮かんだ双眸は憐憫の情を誘わないではなかったが、あくまで強気な態度を崩さないエドワードに、ロイはぞくぞくするような悦楽を感じていた。
 余計にメチャクチャにしてやりたくなる衝動を煽るのが判らないのだろうか。攻撃的とも言える感情の招来に、ロイは身を任せることにした。そうすればどうなるのか、という好奇心もあった。
 「立て」
 すっと身を起こすと、ロイは冷淡な口調で命令した。が、エドワードの腰が立つわけもない。
 「あんたの言うことを聞く義理はねーよ。も……、いいから、さっさと帰っちまえ」
 「そんな無様な恰好でよくも言う」
 「うるせぇっ」
 何とか床に座る体勢にまで持って行ったエドワードが怒鳴る。未だ体はじんじんと疼いているだろうに、引き下ろされた革パンツのファスナーを何とか上げようとしていた。もっとも、小刻みに震える指先が言うことをきいてくれるわけもなく、かちゃかちゃと悪戯にファスナーの摘みを弄る結果となっていた。
 「くそっ」
 悔しげにエドワードがロイを睨みつける。まるで、全ての不条理がロイのせいだとでも言うように。笑い飛ばせばいいものを、しかし、できなかった。
 「何だ、その顔は。まるで元凶が私にあるとでも言いたげだな」
 「違うのかよ」
 「当たり前だ。だが、認めてやってもいいぞ」
 言下に、ロイはエドワードの左腕を掴み上げ、無理矢理立たせると、そのまま隣の寝室へと引き摺って行った。
 起き抜けのままの敷布の上にエドワードを突き飛ばし、反動で体がバウンドする間に、ロイは軍服の上衣を脱いだ。
 さすがにロイの意図を察したのだろう、エドワードの顔から血の気が引く。
 「何をする気だ。あんた正気かよ」
 「もちろんだ」
 中に着ていたカッターシャツのボタンを一つ二つ外しながら、ロイは寝台の上を往生際悪く後ずさりするように逃げるエドワードの上に圧し掛かった。
 「よせっ」
 「よせと言われてやめる者はいない」
 ロイはそのままエドワードを組み敷き、下肢から革パンツを引き剥いだ。慌てたようにエドワードはタンクトップの裾を握ろうとしたが、ロイは許さなかった。
 「いい機会だ。最後まで面倒を見てやろう」
 とてもベットの中とは思えない寒々しい口吻でロイはエドワードの下肢を無理矢理押し広げ、その間に己れの身を滑り込ませた。
 「冗談……っ」
 冗談はここまでにしておけ、と言いかけ、しかし、エドワードはそれ以上口にできなかった。押し付けられたロイの体は熱く火照っていた。
 まさか、と思う。
 「あ、あんた、興奮してんのか」
 俺の体に。とてもではないが、あり得ない事態だった。こうなることを欲してはいたが、余りにも突然の成り行きにエドワードはひたすら逃げ腰になった。怯えていたとは思いたくないが、予想外のことにパニックじみた騒擾が引き起こされていた。それでなくとも、数時間前まで自分の恋人が行方不明になったことをさんざん責めて詰ってエドワードを痛ぶっていたのである。いきなりの方向転換に頭がついて行かなかった。
 「やめろ、馬鹿野郎っ、変態、頭冷やせっ」
 が、いくらもがいても暴れても、すでに押さえ込まれてしまっていては、逃れることも拒絶することもできなかった。
 やがて、ロイの手がまたもや己れの体を弄り始める。再びの情欲の煽りに、エドワードは息を呑んだ。身の危険を感じると同時に、冷めかかっていた肌がじわりと上気し始め、汗を浮かび上がらせた。
 あんな苦しい目に遭うはもうご免だ、と思う反面、ロイに触れられているのを少しでも長続きさせたいとも思う。
 相反する欲望に、しかし、ロイは平然とことを進めて行った。
 「大人しくしろ。刃向かわなければ、手荒なことはしない」
 いっそ優しげにも聞こえる声音で言い渡すなり、エドワードの体を俯せにし、その上に圧し掛かった。
 「信用できるかっ。そこをどけ」
 「私が信用できないのか」
 すっとロイの顔から表情が消える。エドワードはぎょっとした。ロイは激怒すると凍りついたように無表情な顔をする。自分が何か地雷を踏んだのは判ったが、今更撤回はできない。それよりも、宥める方が先だ、と思った。
 「大佐……っ、この馬鹿、何がっついてんだ。正気に戻れよ。あんたは女専門だろうが」
 何とか動くようになった左手で、エドワードは思いっきりロイの頬を平手打ちした。が、すかさず殴り返される。
 「君に言われたくはない」
 どうせヒューズとやりまくっているくせに。ヒューズはよくて、俺はダメなのか。ある意味、火に油を注ぐだけの行為となってしまった。敷布に倒れ込んだエドワードは半分意識を失いかけた。頭がくらくらして、何も考えられなくなる。
 その間に、ロイはエドワードの膝を立てさせ、無理に受け入れる体勢を作った。
 「よせ……」
 エドワードが弱々しく拒絶する。が、ロイは聞き入れなかった。猛った己れを秘部の入り口に押し当て、力を込めた。
 アナルは膣と違って挿入角度に個人差があり、下手に突っ込むと全くインサートできずに入れた方も入れられた方も、悲惨なまでの苦痛に見舞われる。が、偶然にも、上から突き刺すようなアングルが絶妙だったらしい。ずぶっと先端が入り、その径に見合うようエドワードの秘部が押し開かれる。
 「はぅ……っ」
 ずぶずぶと、嫌味なくらい強引にロイのものが入って来る。内壁を削ぎ取って行くような硬い鉄の楔が容赦なく突き入れられ、エドワードの秘部を焼け爛れさせながら奥へ奥へと入って来るのが判る。
 「くっ」
 話に聞いていた引き裂かれるような激痛はなかったものの、男の凶器に刺し貫かれる苦痛は相当なものだった。余りの圧迫感に息ができない、頭ががんがんする、下肢が引き攣り、引いていたはずの汗が噴き出す。
 ぐいっと腰を突き出され、エドワードは声もなく敷布に爪を立てた。己れの下肢にロイの恥骨が当たり、根元まで男根を呑み込まされたのを知らされる。ぎちぎちに嵌ったロイを締め付けてやり、必死にこの陵辱を耐えた。
 が、ロイはしばらく動かなかった。否、動けなかった。アナルセックスなど普通にやることではない。さすがに経験不足だった。予想以上の狭洞に呻き声が漏れそうだった。
 「なかなか、だな」
 ロイは己れを引き抜こうとして身を引いた。いったん抜いて挿し直そうとしたのであるが、その途中、括れが括約筋に引っ掛かり、そこを締め付けられてしまった。とたん、エドワードは冷たい戦慄が背筋を這い昇るような快感に喉を仰け反らせた。
 「ああ、ここなのか」
 アナルは浅い部分を出し入れすると気持ちいいという話を聞いたことがあるのを思い出し、ロイは試しに己れを擦り付けるように先端部分を前後させてみた。
 「や……っ」
 エドワードがびくりと顔を起こす。同時に、ロイはきゅっと締め付けられた。
 確かにいい。先程自分がエドワードに施した愛撫と同じ状態になっていることに気付いたが、ロイは何度も浅い出し入りを繰り返し、その快感を味わった。
 が、エドワードは全く協力してくれない。ロイのなすがまま揺さぶられ、そのくせ隙があれば逃れようとする。ヒューズの躾がなっていないのか、などと身勝手な思いが脳裏を掠めるが、構わずロイは中途半端なグラインドを続けた。エドワードの方も、中よりも敏感な粘膜のある入り口付近を念入りに刺激され、快感を得ているのか、必死に唇を噛み締めていた。
 敷布を握り締め、震える指先を見て、不意にロイはもっと可愛がってやろうか、という気になった。
 「エド……」
 囁くように掠れた声で呼びかけると、僅かに身を起こすような素振りを見せた。
 「もっと深く欲しいか」
 「な、何……?」
 何を言われたのかよく判らない、という声だった。もっとも、エドワードの意向などロイは全く無視するつもりだった。矢庭にエドワードの下肢を引き寄せると、腰を突き入れてやった。
 「い……っ」
 ずぶっと、いきなりロイの男根が奥深くまで没入する。焼け爛れるような熱の塊にきつく内壁を擦り上げられ、激痛を伴った衝撃にエドワードは悲鳴も上げられなかった。否、そんな暇はなかった。深々と秘部を抉られたかと思う間もなく、ロイは腰を引き、すかさず叩きつけるように再び己れを打ち込んだ。
 「あうっ」
 甲高い音とともに、エドワードの体が跳ね上がる。それをきっかけに、激しいグラインドが始まる。
 何度も内臓を押し上げては引きずり出されるような衝撃を与えられ、次々襲ってくる圧迫感と快感に、エドワードは必死で敷布にしがみ付いた。まるで振り落とされまいとするように掴み上げる。
 「あ、くっ……、い、痛……」
 どこが痛いのだろう。昨日殴られた頬か、今日ハボックに折られそうになった腕か。いや、今自分が犯している接合部分か。しかし、そんなことはどうでもいい、とロイは思った。行為に没頭してしまうと、相手の苦痛など考えていられなくなる。己れが得られるだけのめくるめく快楽だけが追及の対象だった。
 やがて、痙攣するようにエドワードの秘部がこれまでになくきつく収縮した。男の体でも高まって達することがあるのだろうか。よくは知らないが、そんなこともあるのだろう、とロイは勝手に思った。
 「イキたいか」
 今思い出したように、エドワードの股間を握りこむ。怒張しているそれは、すぐにでも弾けそうだった。ここまでストップをかけてしまうと、さすがに気の毒だった。
 「イカして欲しいなら、ちゃんと言ってみろ」
 意地悪く、ロイは己れが主導権を握っている旨宣言してからエドワードの言葉を待った。
 「も、こんなこと、よせ……っ」
 エドワードが何とか言葉を綴り出したのは、ぎしっと寝台のスプリングが悲鳴を上げるように軋んだ直後だった。ロイのそれが深々と突き刺さり、さんざん擦過された肉襞が痛々しく戦慄く。
 いい締まり具合だった。
 「言わなければ、このままだ」
 「それなら、あんたの方をイカしてやる」
 凶悪に、エドワードが挑発する。ロイは褒めてやりたい気分になった。そんなことができるものか、と思う。ここまでの情交で、エドワードはこの行為に大して経験がないことが判ってきた。どうやらヒューズはそんなにまめに可愛がってやっていたわけではないらしい。
 「やれるものなら……」
 と、ロイも右手でエドワードの男根の竿を扱く。予想通り、己れの下で小柄な四肢がびくりと反応した。この調子なら、時を置かず、禁を解いてしまうだろう。
 そして、それは間違いではなかった。
 巧みに動く指の動きに煽られ、唆され、エドワードは導かれるまま背を弓なりに仰け反らせ、身の内のロイをこれまでになくきつく締め付けながら、絶頂へと達してしまった。
 「いっあ……あぁぁぁ……」
 どこか悔しげな声を漏らしながら、べっとりとエドワードはロイの右手を濡らした。苛烈なまでに焦らされたそこは、やっと訪れた解放に全身を震わせる。
 はぁはぁと荒っぽい息遣いとともに、エドワードはそのまま敷布に倒れ込んだ。その弾みにロイのものが外れる。ずるりとした感触が秘部の中を擦り、抜け出ていく感触は酷く卑猥な感じがした。
 「エド……」
 朦朧とした頭に、ロイの声が響く。汗ばんだ肩に手をかけられ、ころりと仰向けにされる。その上にロイが圧し掛かった。
 「一人だけ先に行ってしまって、それで終わりにするつもりか」
 と、股間にロイのものが押し付けられる。エドワードは面倒臭そうに言った。
 「素股でもやれってのか」
 「それは味気ない」
 まだ憎まれ口を叩くエドワードを小面憎く思いながら、ロイは片足を持ち上げ、下肢を開かせ、その狭間に己れを捻じ込んだ。
 「あ、くっ」
 再びの侵入に、しかし、エドワードのそこは従順に濡れたロイを受け入れた。ひくつく粘膜は余りの仕打ちにまだ戦慄いていたが、拒絶するにはもう遅かった。
 「しつこいぞ、あんた……」
 「最後まで付き合ってやろうと言っているだけだ」
 聞く耳を持たず、ロイはエドワードの腰の下に枕を噛ませ、下肢を浮かせた体勢でグラインドを再開した。
 「こ、この……っ、まだやる気かよ」
 「君だって満足してないだろう。このまま放置されるよりはいいはずだ。それに、もっといい思いをしたいとは思わないか」
 「言ってろ」
 口の悪さとは裏腹に、温かな内壁はロイを迎え入れ、絡みつくように誘ってきた。多分に強引な挿入ではあっても、それなりに慣れているらしい。
 「痛いか」
 「い、痛くないけど……」
 「何だ」
 「こういうのは、初めて……」
 ヒューズと比べて、ということか? ロイはちょっとした優越感に浸ったが、体の欲求は性急だった。背中を押されるように好きなだけグラインドし、狭洞の中を捏ね繰り回してはエドワードをさんざん泣かせ、その挙げ句に達した。いい気分だった。これならば、己れの味を覚えさせてこちらに引き寄せることもできるかもしれない。
 リバースだな、とロイは北叟笑む。
 ヒューズのものを奪うなど、これまでなかったことだったが、半ば意識のないエドワードの唇にキスしてやり、ロイは満足げにベットを降りた。








2006,11,18 To be continued

  
 やっとこさ、hシーンです。書けた〜〜〜、と喜んだものの、読み直してみると、エドが思ったより冷静で……。そういや、以前、ヒューズに強姦される話を書いた時も、エドに余裕があると言われたことがあったっけ。(^▽^;)
 いじらしいエドがなかなか書けなくてすみません。